電子帳簿保存法とは?個人事業主に必要な対応をわかりやすく紹介
電子帳簿保存法ってなに!?
今までの確定申告じゃダメなの!?何かしなきゃいけないの!?
2023年までの確定申告でしてきたことだけだと不十分だね。
残念ながらしなきゃいけないことや、導入しなきゃいけないものが増えたよ。
え!?何もしてないよ!!どうしよう!!
安心して!!
電子帳簿保存法なんて言葉では難しく聞こえるけど、やることは別に複雑なことじゃないから!!
2024年1月1日に改正電子帳簿保存法により、電子取引データのデータ保存が義務化されました。これは個人事業主やフリーランスも対象です。
つまり、対応できなければ罰則があります。
必要なことなので、しっかり対応していきましょう。
この記事では、電子帳簿保存法がどんなもので、実際に個人事業主が対応するためには何をすれば良いのかを具体的に紹介しています。
- 電子帳簿保存法やよくわからない人
- 具体的な対応方法が知りたい個人事業主の人
電子帳簿保存法とは
電子帳簿保存法は、税務関係の書類をデータで保存できるよう、そして情報化社会に対応できるよう国が定めた法律です。
今まで確定申告で必要だった領収書などの書類は紙で保存していました。
そういった書類を「電子化しましょう!!」という法律です。
実は電子帳簿保存法じたいは、1998年から始まっていました。
しかし書類を電子化するためには、納税地の税務署長の承認が必要で義務ではなかったため、ほとんどの個人事業主は申請していませんでした。
しかし2022年の法改正で、任意から義務へ。
突然の変化に対応が追いつかないということで、2023年12月31日までの2年間が準備期間として猶予が設けられ、遂に2024年1月1日から義務化されました。
電子保存が必要な書類はどれ?
電子帳簿保存法は3つの区分に分かれています。
電子帳簿保存法の3つの区分
- 電子帳簿等保存
自分が会計ソフト等で作った帳簿や決算関係書類などを電子データのまま保存すること。 - スキャナ保存
請求書や領収書などを、紙で作成したり・受け取った時に画像データで保存すること。 - 電子取引データ保存
請求書や領収書などを、電子データ(PDFなど)で作成したり・受け取った時にデータのまま保存すること。
義務化された対象
義務化された対象は電子取引データ保存。
契約書・送り状・見積書・注文書・請求書、領収書等をメールなどを使って電子的にやり取りした場合、そのデータは電子取引データ保存に該当します。
データは受信した側だけでなく、送付した側も保存義務があります。
全てのものが義務なわけではありません。
対応が義務になったのは、❸の『電子取引データ保存』のみです!!
つまり、電子データで送られてきた請求書や見積書はデータのまま保存が必要だけど、最初から紙でもらった書類は、今まで通り紙での保存でも大丈夫ということです。
電子取引データ保存に該当する具体例を紹介
電子取引データについて書きましたが、まだイメージしにくいと思うので、具体例を紹介します。
電子化するものに困ったときは参考にしてみてください。
該当する具体例
- 電子メールやビジネスチャットなどで送られてきた請求書の電子データ。
- Amazonなどのネットショップで、仕事で使うものを購入した時にサイトからダウンロードする電子データの領収書。
- クレジットカードや交通系ICカードの利用明細や支払明細をスマートフォンアプリで見て撮ったスクリーンショット。
- オンラインストレージでダウンロードした書類。
- USBで書類をもらった。
対応が任意のもの
電子帳簿保存法は3つの区分のうち、電子取引データ保存以外の2つは対応が任意です。
ですが、個人事業主でも取り入れることでプラスになるものもあるので、紹介しておきます。
電子帳簿等保存
電子帳簿等保存は、自分が会計ソフト等で作った帳簿や決算関係書類などを電子データのまま保存すること。
クラウド型の会計ソフトを使っている人は、既に対応していることになりますね!!
『個人事業主に必要な対応は4つ』の項目でも触れますが、義務になった電子取引データ保存の対応で、検索できる機能が必ず必要になってきます。
この機能が備わっているのが、クラウド型の会計ソフト・マネーフォワード。
マネーフォワード内にあるクラウドboxを使うことでクリアできます。
クラウド型の会計ソフトを使っていない人は、これを機に導入することをオススメします。
電子帳簿等保存を行うメリット
- 優良な電子帳簿の要件を満たすと、青色申告特別控除額が55万円から65万円になる。
- 優良な電子帳簿の要件を満たすと、過小申告加算税が5%軽減できる。
- 保存場所の確保やファイリング作業が削減できる。
- パソコン上でデータ検索できるので、必要な書類がすぐに見つかる。
電子帳簿等保存を行うデメリット
- 会計ソフトの利用料金がかかる
スキャナ保存
スキャナ保存は、請求書や領収書などを紙で作成したり・受け取った時に画像データで保存すること。
任意なのでする必要はありません。
今まで通り、紙の状態で7年間の保存ができていれば大丈夫です。
ですが、仕事場の整理やペーパーレス化に向けて動きたい人は、スキャナ保存を取り入れてみても良いかもしれません。
導入する人にオススメのアイテムが、レシートスキャンボード。
低反射シートが天井の明かりの反射を防いでくれたり、シワになってしまったレシートも綺麗に伸ばして撮影することができます。
スキャナ保存をするとき、守らなければいけない要件があります。
導入する人は、一度確認してみてください。
- スキャナ保存をはじめる時の事前準備と要件
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事前準備
- 環境を整える
スキャンデータの検索ができる、スキャンデータとデータに対応する帳簿との間で、相互に関連性が確認できるようにしておく。
→会計ソフトを使うことで解決できます。 - 規程を設置する
スキャナ保存をはじめるには、『スキャナによる電子化保存規程』と『国税関係書類に係る電子計算機処理に関する事務の手続を明らかにした書類』を作る必要があります。下のボタンからサンプルがダウンロードできます。
スキャナ保存の要件
- 正しいファイルの画質で撮影する
解像度が200dpi相当以上で、色は256階調以上(24ビットカラー)であること。 - 期間内に保存する
早期入力方式:書類を作成または受領してからおおむね「7営業日」以内。
業務処理サイクル方式※1:自社で採用している業務処理サイクルの期間(最長2ヶ月以内)+おおむね「7営業日」以内。 - タイムスタンプをつける
- バージョンを管理する
スキャンデータの訂正・削除を行った時に記録が残るシステム、または訂正・削除ができないシステムを使う。 - システム概要書を備え付ける
※1 『業務処理サイクル方式』は、会社で書類を作成または受領してからスキャナ保存を行うまでの事務処理規程を定めている場合にのみ採用できます。
- 環境を整える
スキャナ保存を行うメリット
- 紙の書類や領収書で場所を取ることがなくなる。
スキャナ保存を行うデメリット
- 電子データ化の事務作業が増える。
個人事業主に必要な対応は4つ
個人事業主がやならければいけないことは4つ。
個人事業主が対応すること
- ディスプレイの設置をする。
- カラープリンターを備え付ける。
- 改ざん防止のためにタイムスタンプを付与できる環境を作る。
- 電子取引データをいつでも検索できる機能をつける。
この4つは、税務調査のときに必要になります。
個人事業主に税務調査が入る確率は0.5%~1%程度と言われています。
とても低い確率ではありますが、この環境が揃えられなければ違反となってしまいます。
電子帳簿保存法の義務化で、この設備が個人事業主として開業する必須条件になってしまったってことですね。
ディスプレイの設置をする
ディスプレイの設置は、電子保存されたデータを確認するために設置が求められています。
電子データの受け取りをしているということは、既に見られる環境があるということだと思います。
既に使っているパソコンなどで十分なので、改めて購入する必要はありません。
カラープリンターを備え付ける
カラープリンターはディスプレイと違って、元から仕事場に置いていない人もいるかと思います。
仕事場の近くにコンビニなどコピー機が設置されている施設があれば、印刷環境があるとみなしてくれる場合があるので、必ずしも買う必要はありません。
税務調査が入り、職員に印刷を求められたらすぐに出力できる環境があるかどうかが重要です。
ちょっとコンビニまで距離がある……といったように、すぐに印刷ができない場合は、カラープリンターを購入する必要があります。
改ざん防止のためにタイムスタンプを付与できる環境を作る
タイムスタンプとは、ある時刻にその電子データが存在していたことと、タイムスタンプが押されてから改ざんされていないことを証明する技術です。
タイムスタンプについて詳しく知りたい人は、こちらの記事をご覧ください。
電子取引データをいつでも検索できる機能をつける
電子取引データをいつでも検索できるように対応するのにオススメなのが、会計ソフトのマネーフォワード。
電子取引データを保管する時、以下3つの機能が備わっていないといけません。
必要な検索機能
- 取引の年月日・その他の日付・取引金額・取引先が検索できる
- 範囲を指定して検索できる
- 2以上の任意の組み合わせで検索できる
この機能が備わっているのが、電子帳簿保存法に対応した会計ソフト。
こんな感じに検索できなければ、要件を満たすことができず、罰則対象になってしまいます。
会計ソフトを使う以外にも、表計算ソフトを使って索引簿を作ったり、ファイル名を徹底管理することで要件を満たすこともできますが……作るのが大変。
パソコンが壊れてしまったりデータが消えてしまった時のことも考えると、会計ソフト内のクラウドにアップロードして保管する方法が一番安全で安心して使うことができます。
さいごに
電子帳簿保存法がどんなもので、実際に個人事業主が対応するためには何をすれば良いのか紹介しました。
ディスプレイとカラープリンターの設置、タイムスタンプを押せる環境作り、そしてデータを保存・検索できるような会計ソフトを使う。
そして対応するのは、電子的にやり取りし書類の『電子取引データ』。
やらなければいけないことは明確になったかと思います。
法律で決まった必要なことなので、しっかり対応していきましょう。
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