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movie labo|映画『ノッティングヒルの恋人』の研究(ネタばれ有)最後までうねりにうねらせる。

ノッティングヒルの恋人

ノッティングヒルの恋人画像引用元:(C)UniversalPictures/Photofest/MediaVastJapan

1999年公開の恋愛映画。監督ロジャー・ミッシェル、脚本リチャード・カーティス。123分。

恋愛映画にはたくさんの傑作がありますが、これも屈指の名作だと思います。

ジュリア・ロバーツはこれぞハリウッド女優というような美しさと貫禄があり、ヒュー・グラントも「平凡」な男をとても魅力的に演じています。主題歌の「She」もとても心に沁みますね。

そしてリチャードが描いたシナリオ。
「Mr.ビーン」や「戦火の馬」を脚本、「ラブ・アクチュアリー」は脚本と監督もしています。

こちらも恐ろしいクオリティになっています。

『ノッティングヒルの恋人』のヒーローズ・ジャーニー

それでは今回もヒーローズ・ジャーニーを見ながら研究していきましょう。
「ヒーローズ・ジャーニーって何?」いう方はこちらの記事をどうぞ!!

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日常世界/賢者との出会い

イギリス・ノッティングヒル。
平凡な街に住む平凡な男・タッカーは売れない旅行本専門店の店主。

妻にも駆け落ちされ、今は奇人のスパイクとともに住んでいる。

冒険への誘い

ノッティングヒルの恋人画像引用元:(C)UniversalPictures/Photofest/MediaVastJapan

いつものように仕事をしているタッカー。すると、大スター女優のアナが店を訪れる。

その後偶然にも再び出会った時、タッカーがアナの服を汚してしまう。
家に招き入れ、着替えとともに精一杯のおもてなしをするタッカー。

アナは突然キスをし、今のは秘密にしてほしいと言い残し去っていく。

冒険の拒否

アナを想いながらも、行動せずいつもの日常を過ごしているタッカー。

戸口の通過

アナからの伝言を聞き、アナと再会するタッカー。
アナはタッカーのために夜の予定を空ける。

試練、仲間、敵

ノッティングヒルの恋人画像引用元:(C)UniversalPictures/Photofest/MediaVastJapan

その夜、タッカーの妹の誕生日に参加するアナ。マックスら友人達と楽しい食事をする。
その後もデートを重ね、アナがタッカーをホテルに招き入れようとする。

最大の試練

タッカーが部屋を訪れると、アナのアメリカの恋人がアナに内緒で来英していた。タッカーはアナに別れを告げ、帰っていく。

報酬

マックスが紹介し、さまざまな女性と食事をするタッカー。
しかしアナとの出会いは奇跡だったと再認識する。

帰路

ノッティングヒルの恋人画像引用元:(C)UniversalPictures/Photofest/MediaVastJapan

ある日アナのスキャンダルが発覚する。

そして再びイギリスに来たアナは、マスコミから逃れるためにタッカーの家に逃げてくる。受け入れるタッカー。

アナの傷は癒され、2人は一夜を共にする。

復活

翌朝。タッカーの家にマスコミが押し寄せ、パニックになるアナ。スパイクがパブで喋ってしまっていた。
喧嘩をするアナとタッカー。昨日のことは永遠に後悔すると言い残し、アナは家を出る。

月日が流れ、タッカーが新しい人生に進もうとした時、アナがイギリスにやってくる。

タッカーはやはりアナが忘れられず、再会する2人だったが、タッカーはアナの会話を誤解してしまい、傷ついてしまう。
アナが告白するが、幾度の出来事に平凡な僕には立ち直れないと断るタッカー。アナは去っていく。

しかしスパイクの言葉によって、タッカーは自分の過ちに気付く。
すぐさまアナに会いに行き、許しを願う。

受け入れるアナ。アナはイギリスに永遠にいるとマスコミに発表する。

宝を持って帰還

ノッティングヒルの恋人画像引用元:(C)UniversalPictures/Photofest/MediaVastJapan

結婚した2人。妊娠したアナ。2人は幸せな時間を過ごしている。

『ノッティングヒルの恋人』のテーマ

大スター女優と売れない本屋の店主の恋愛。ビバリーヒルズとノッティングヒル。
明らかに

 

身分違いの恋

 

を描いています。

 

同じテーマを描いた恋愛映画「ローマの休日」がありますが、オマージュしている点がいくつかあります。

冒頭のニュース音声でヒロインを紹介するところや、コーヒーをこぼすところもベタなのでわかりませんが、「ローマの休日」では何度も登場するシーンなので意識していたのかもしれません。

そしてクライマックスの記者会見。「ローマの休日」と同じ状況で、答えは真逆。という風に作っていますね。

『ノッティングヒルの恋人』をさらに詳しく

「ヒーローズ・ジャーニー」ともう一つ大切な要素「三幕構成」について詳しくしてワンシーンずつみていきます。

第一幕

オープニング。
「She」の歌とともに大スター女優・アナの華やかな映像が流れる。

ノッティングヒルを歩くタッカーの映像に合わせ、タッカーのナレーションでノッティングヒルの雰囲気と妻が駆け落ちしたことを説明していく。

そしてスパイクが登場し、彼の店に向かう。

アナの華やかな世界とタッカーの平凡な世界を順番に見せることで対比を作っています。

スパイクはとても重要なキャラクターです。
奇人な彼は多くの場面でタッカーを困らせたり、足を引っ張ったり。つまり試練を作り出します。
主人公にとって「困ったちゃん」と言われる立ち位置です。

しかしそれだけでなく、第二ターニングポイントで彼の一言がタッカーを目覚めさせます。賢者の役割も持ち合わせているのです。

登場シーンから、彼の下ネタ好きな奇人ぷりを表していますね。
そしてそんなスパイクに対して優しいアドバイスをするタッカーも同時に見せています。

キャラが立っているからこそ、そのリアクションで別のキャラが表現されるのです。

タッカーのナレーションは、「僕の人生を変える日になるとは知らずに……」と、過去を振り返る形で話しています。

となると結末には現在について語るナレーションが入りそうな気もしますし、ラストシーンもいかにもナレーションがありそうな映像です。が、ここでも「She」が流れます。

僕の勝手な予想ですが、シナリオにはナレーションがあったのですが、「She」がとてもよかったので変えたのではないかな?と思っています。

そしてアナがタッカーの店を訪れ、さらに再会し、タッカーの家に向かいます。

タッカーの万引き犯とのやり取りを見ていたから、アナはタッカーの家に行けたのかな?と思います。

アナが来店したことを店員のマーティンに話さないところも、彼の品位を感じます。
アナがいないところでもその態度を示すことが、観客に好印象を与え、タッカーを好きになります。

そしてタッカーが精いっぱいアナに何かしようと試みますが、断られ続け……アナは去っていく……と思いきや最後に突然のキス。
シーンのオチにサプライズを与えています。

アナからの伝言を聞き、ホテルでアナと会います。

記者のインタビューという形のやり取りが、ラストの伏線になっています。

ここで監督が室内にいることも重要です。

事情を知らない3人目がいて、関係を隠そうとするからこそ、インタビューになってしまうという面白さが生まれています。
もしここをアナとタッカーだけでシーンを作るとすると、面白くするのは難しいと思います。

会って、キスは間違いだったと知り、帰る。

これだけのあっさりしたシーンになりそうですし、しかもすでに二人だけの会話は直前にタッカーの家でやっているので、似たような構図のシーンを続けるのは良くないです。

それを避けようと新しい何かを生み出そうとすると、また設定を作るために何かをしなければならなくなり、無駄なシーンやセリフが増えていきます。

しかしその場に3人目のキャラクターがいるだけで、三角形の関係性が生まれ、複雑なシーンになります。

監督がいたり、いなかったり、何も知らないがゆえに無理な注文を受けてしまったり。

シーンの中で次々と状況を変化させることが出来て、面白くなるのです。

そしてその夜にタッカーの妹・ハニーの誕生日会にアナと行くことになる。
これが第一ターニングポイントです。

第二幕

ハニーの誕生日会。
タッカー、そしてアナも、ブラウニーを賭けてみじめな話をします。

一見栄光を手にしているアナにも、不安なところがあるのが面白いですね。マックスは演技で騙されないと言いますが、おそらくアナの本心だったと思います。

だからこそ、アナも1人の女性としての幸せを手にしたいのでしょう。

お互いに弱気な部分を共有することで、二人の距離が近づいたと思います。

夜の庭に忍び込み、二人はキスをします。

一生を共にしたメッセージが刻まれたベンチにアナは座りますが、タッカーは最初は座ろうとしません。
これもラストの伏線となっています。

レストランのシーン。
楽しく会話をしていましたが、男性客のアナへの侮辱を聞き、二人は怒ります。

タッカーは注意をし、アナも彼の影響を受け、皮肉を言います。
タッカーとアナがより強力な関係になったことを表しています。

侮辱も彼女に対する性的な言葉で、スキャンダルが最も彼女を苦しめる要素だとここで示しています。

そしてその直後のシーン。
アナはタッカーをホテルに誘い、時間を置いてタッカーが部屋に入ると、アメリカからの恋人がアナに内緒で来ていた。

ルームサービスと言ってしまったタッカーは片付けをさせられ、目の前でキスを見せつけられる。

アナに別れの言葉を伝え、帰っていくタッカー。

ついに来たか……と高まっていたタッカーをどん底に落とすシーン。
とっさの嘘がルームサービスと言ってしまったがために、片付ける行為やチップが侮辱のように思え、さらにタッカーを追いつめます。

レストランでの楽しい会話→侮辱による怒り→部屋に誘う→落胆し帰るタッカー。

一連のシーンの中で感情が上がったり落ちたりと、シーンの入り口と出口で感情のうねりをしっかりと作っているので、面白いはずですね。

そしてどちらのシーンにも男性客・アメリカの恋人、と3人目のキャラクターが関わっています。

このどん底の瞬間が、ちょうど映画の半分の時間にあり、一つの区切りとなっています。

その後、アナと一夜を共にし、再びうまくいきそうになりますが、タッカーはさらに深いどん底に落とされます。
アナと喧嘩し、最悪な形でアナと別れる。これが第二ターニングポイントです。

第三幕

月日が流れる表現を、ただ映像を重ねるのではなくワンカットで見せているのはとても面白いですね。

ハリーの恋愛や妊婦の出産など、細かい工夫もあります。

アナを忘れらないタッカーが再びアナと出会い、告白されますが、今度はタッカーが断ることでさらにもう一つのうねりを作っています。

アナの告白シーンも邪魔ばかり入り、焦らして、もどかしい流れになっています。
タッカーの答え同様に、なにか腑に落ちない、消化不良な印象を与えますね。

すべてはクライマックスをより引き立たせるための工夫です。

その後マックスたちに同情してもらうために話している行為も、タッカー自身が無意識に間違えていることを感じ取り、正当化しようとしているのでしょう。

そこをスパイクがはっきりとタッカーの本心を突きます。

そしてマックスたちの力を借りてタッカーはアナのもとへ行き、記者会見の形で許しを請い、二人は本当に結ばれます。

ラストシーン。住民専用の庭にあるベンチにいる二人。中盤に登場したベンチと同じではありませんが、二人は一生を共にしていくことを表しています。

さいごに

ワンシーンの中でうねり・変化を作り、それを連続して繰り返しさらに大きなうねりを作りながら、クライマックスに向かっていく。

本当に素晴らしいシナリオでした。

次回は初の邦画。北野武監督の「BROTHER」を研究します。

– fin –

ABOUT ME
akira
akira
1990年生まれ。SNSとは無縁の人。 映画を、物語・シナリオの側面から、深く「面白さ」を知ってもらうために「movie labo」で連載スタート。 生粋のリバプールファン。
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